矯正治療はなぜ長くかかるのか?早く歯を動かせない理由
矯正治療のデメリットの一つとして、「期間が長くかかる」というものがあります。この事実がネックとなって矯正治療を踏みとどまる人は実際多いようです。現在、目立たない矯正治療が選択でき、かつての矯正の一つの欠点であった「目立つ」というものはほぼなくなりつつあるのですが、やはり、器具が長期間歯につくということ自体がストレスで、「なぜ矯正治療はさっさと歯を動かせないのだろう?」と疑問に思われている人もいることでしょう。今回はなぜ、矯正治療で早く歯を動かすことができないのか、もし無理に早く動かそうとしたらどうなるのか、そして、新しい「歯を早く動かすことのできる矯正治療」に関する注意点についてご紹介していきます。
矯正治療が短期間で終わらないのには理由がある
矯正治療の一般的な治療期間というのは大体2年〜2年半くらいです。これは他の歯科治療などと比べると確かに長いと言えるでしょう。でも矯正治療が短期間で終わらないのには次のような理由があるのです。
骨の代謝に合わせて行わなければならないため
矯正治療は歯に装置をつけて、歯に力をかけることでゆっくりと動かしていきますが、このペースというのは、骨の代謝のスピードに合わせているのです。人間の骨は一度できると何も変化していないように思われるかもしれませんが、実は肌と同じように毎日、「破壊」と「再生」という代謝を行なっています。この骨代謝のペースに合わせ歯を動かす場合、歯の動くスピードというのは大体1ヶ月に1mmくらいになってしまうのです。強い力をかければもっと早く動くのでは?と思うかもしれませんが、実際そうしても歯が早く動くわけでもなく、ただ歯や周囲組織に負担がかかりすぎるだけで、様々なトラブルを引き起こしてしまいます。
歯が並んだ後保定期間が必要になるため
矯正治療というのは、歯が並んだら装置を外してすぐにおしまい、というものではありません。歯がきれいに並んだ後は、矯正装置をつけていた期間と同じ期間くらいの「保定期間」というものが必要になります。歯が動いて間もないうちは、歯の周囲の骨がまだしっかりと詰まっていないのと、歯が移動して引っ張られた歯茎の繊維の形がまだ不安定であるため、元の位置に戻ろうとする力が働いてしまいます。そのため、保定装置(リテーナー)とよばれるものを一日に長時間、歯につけて後戻りを防ぎます。
ずっと歯の表面についていた器具は外れますので、終わったも同然のように感じて、保定装置をつけ忘れてしまう人がいます。しかし、そうすると、歯が後戻りを起こしてまた歯並びが崩れてしまうことになるので注意が必要です。
小児矯正の場合
小児矯正の場合、1期治療と2期治療がありますが、1期治療は永久歯に全て生え変わるまで、2期治療は永久歯が生えそろった後から行います。小児矯正は1期治療から始めますので、全て永久歯に変わるまでの12〜13歳くらいまで続くのと、その後2期治療に移行する場合には、それからさらに治療が続くため、長く感じられるかもしれません。しかし、子供の矯正は顎の成長期間に合わせて行う必要があるため、これを早く終わらせる、ということはできません。
歯を早く移動させようとするとどうなるか
当院でも「早く矯正を終わらせたいので、力を強くかけてもらえませんか?」というご要望を受けることがあります。しかし、歯を動かすのには適正な力というものがあり、歯に強い力をかけても、歯がスムーズに早く動くわけではありません。矯正治療は、歯を動かそうとする力によって圧をかけられた周囲の骨が破壊と再生を繰り返すことで歯が動くのですが、力をかけすぎると、歯そのものの歯根が破壊吸収されて短くなってしまうことがあるのです。そうすると、骨に埋まっている歯根が短くなるため、歯自体長持ちしなくなってしまう危険性が出てきます。
最近の「歯を短期間で動かすことのできる」矯正治療の注意点
新しい矯正治療法で「歯を短期間で動かすことのできる」ものとして、よく「インプラント矯正」というものをインターネット上でも目にします。「インプラント」という名前はつきますが、これは歯が抜けたとこに埋める「インプラント」とは全く別物です。
インプラント矯正では、通常歯を動かす際に他のがっちりした歯を固定源として、その歯と綱引きの原理で動かしたい歯を引っ張っていきます。ですが、その固定源となる歯も多少動いてしまう、という欠点があるため、治療上、その分ロスが生まれてしまいます。そこで、矯正用マイクロインプラントというものを埋め込み、それを固定源にして動かしたい歯を引っ張ることで、従来のようなロスを無くし、効率よく歯を動かすことができるのです。そのため、それがスムーズに歯を並べられることにつながるため、「歯を短期間で動かすことができるインプラント」として認識されている部分があります。
ですが、この方法はしっかりとした矯正診断能力を持った矯正歯科医が、きちんとした治療計画をもって初めて実現されるものです。この方法さえ使えば、誰でも治療が早く進められるわけではありません。そのため、矯正歯科医選びは慎重に行う必要があります。当院では、経験豊富で、国際口腔インプラント学会認定医、日本矯正歯科学会認定医である歯科医師が施術を行いますので、安心して治療を受けていただけます。