代表的な矯正学会や団体について
よくあるご質問
日本矯正歯科学会には、認定医、指導医、専門医ってあるけれども、どういうものなの??
矯正学会も色々?○○認定医も色々あるような?どれがよいの??インビザライン認定医ってあるの??
患者様目線で見ると色々な矯正学会名や色々な○○矯正学会認定医、矯正○○医を目にすることと思います。患者様にとっては正直なところ何が何だかわからないと思います。この混乱を防ぐ意味合いで簡単ではありますが、代表的な矯正学会や団体についてご説明させていただきます。
世界矯正歯科連盟(WFO)は、ピラミッド形式で考えてみますと各国の矯正学会の頂点に君臨し、各国の代表格となる矯正歯科学会を束ねている団体です。国際的には一番大きな矯正歯科分野の学術団体です。
日本矯正歯科学会は、世界最大の世界矯正歯科連盟の分科会として世界で正式に認められている学術団体です。アメリカでは、アメリカ矯正歯科学会が国内最大の学術団体で、こちらも世界矯正歯科連盟の分科会です。日本国内の歯学部26校のすべての矯正学講座の教授陣、医局員全員が入会していると共に矯正専門医であればほぼ間違いなく入会している学会です。会員数は約6,700名と国内最大です。(それでも現在国内の歯科医師数は約11万人ですので、会員になっているDrは少数です)
日本矯正歯科学会の認定医、指導医、専門医制度は、矯正学の習熟の証と表側の装置による矯正治験数についての実績評価であり、矯正治療を行おうと思っている方には、一つの目安となります。
日本成人矯正歯科学会は、私が日本矯正歯科学会認定医を取得した後に発足した学会で比較的新しい学会です。主な会員は、矯正の開業医、一般歯科のDrですが矯正を学びたい方や歯学部矯正科の元教授なども数名参加しています。会員数は、ぐっと少なくなり約1,200名程度。矯正医院に勤める歯科衛生士向けに教育を行い矯正歯科認定衛生士制度や技工士制度なども作り、Drだけでなく矯正歯科医院内のスタッフも研鑽出来るような講演なども多く企画し積極的に活動しています。研究機関、学術団体というよりは、主に臨床の場で役立つ情報などを発信している団体ですが、ある程度の矯正の実力を持ったDrを育成することを目的として独自に2年間の矯正研鑽コースなども開講しています。
舌側(裏側)矯正歯科学会は、元々裏側矯正装置の販売を行うアメリカの機材メーカーが裏側矯正の発展のために、裏側矯正を勉強したい日本のDrを集めて勉強会を始めたのが前身で数年前に学会へ名称変更を行いました。その為、学会という名称にはなっていますが、いわゆる学術団体、研究機関ではなく裏側矯正勉強会グループと考えた方がよろしいと思います。会員数は、スタディグループレベルですのでさらに少ない500名程度。日本矯正歯科学会の会員総数6,700人と比較すると裏側矯正について継続して学ぼうとしているDrがごく少数であることが推察出来ると思います。そして裏側矯正が的確に行える矯正医は、さらに少ない裏側矯正学会会員500分の○人となってしまいます。本当にごく少数なのが理解して頂けると思います。
日本臨床矯正医会は、矯正単独で開業なさっている院長達が矯正臨床の発展の為に発足し開業医同士の連携を積極的に行っている会です。会員医院約460件。矯正治療中の転院などの際の転院資料のフォーマットなどを作成し、会員内での転院に役立てています。同士の集まりの会であると思います。
結論から申し上げます。インビザライン認定医というカテゴリーは、世界的に存在致しません。言葉は悪いですが、そのようなDrは、いわゆる経歴詐称になってしまうと思います。インビザライン認定医とうたっている方々はおそらく以下の方々であると思います。インビザライン導入の為の講習会に参加するとインビザラインを提供しているアラインテクノロジー社よりインビザラインのサティシフィケイトが授与されます。以後インビザラインを患者様に提供出来るようになります。よくウエブ上でインビザライン認定医と記載してあるのは、この講習会に参加したDrということを表しますが、何もマウスピース矯正の実力を表すものでもありません。インビザラインの制作発注が出来るだけのDrなのです。もし矯正学をしっかりと学びかつ相当の臨床経験を持つ本当の意味の矯正専門Drであれば経歴詐称のような肩書は必要ありませんのでそのような認定医であるということを告示する必要もありません。医療人としてのモラルを疑わずにはいられません。私がお伝えしたいことは、もし矯正治療を提供するのであればしっかりと矯正学を学び、客観的な実力を真の学会で証明した後に治療を提供して欲しいと思っています。マウスピース矯正もやはり矯正の認定医以上のDrに診療してもらった方が後々のトラブルを回避することが出来ると思います。治療費だけで医院を選ぶのは危険であると思います。非常に低コストでマウスピース矯正を提供している医院は増加の一方ですが、安かろう悪かろうとなってしまう危険性があることを念頭にいれておくとよいと思います。
以上主な矯正団体についてご説明させていただきました。その他日本の矯正界には、数え切れないほどの矯正学会や矯正会という色々な名称の付いたグループがあります。矯正の治療法やテクニック、装置別にそれぞれのスタディグループがあったり、大学別でスタディグループがあったりします。またあまり大きな声では言えませんがどちらかというと新興宗教まがいのようなグループもあります
(要は自分たちが行っている矯正治療が一番良くて正しくてその他の治療法はすべて間違っているということを公言までしてしまう方々が集まっているグループまであります。矯正学が、医学の一部である以上、学術的に見て一定の診断基準、治療基準があり、また、たまたま偶然良くなったというレベルではなく再現性のある診断および治療法と再現性のある治療結果を生み出すものでなくてはなりません。ある一部の方だけが正しい治療というようなものは、医学の範疇を超えた別分野のものであるような気がいたします。)
このように国内には、様々な矯正学会や認定医のような資格があふれています。私自身も海外だけでなく国内の色々な矯正学会、矯正の勉強会、スタディグループにも絶えず参加し研鑽を積んでいますが、日本国内の正式な矯正分野の学術団体は、WFO(世界矯正歯科連盟)加盟の日本矯正歯科学会のみです。その他は、学術団体、研究機関までは到達出来ていない状況で、学会としての外形基準を満たすことが出来ていません。
学会という名の元のそれぞれの分野の勉強会グループと考えると間違いはないでしょう。
各ドクターが自身の研鑽の過程、ある通過点としてこのような○○認定医などを取得する、あるいは目指すことはすごく良いことだと思います。
しかしながら患者様目線で考えますと日本矯正歯科学会以外の○○学会認定医や○○医等の資格は、患者様にとってはあまりあてにならない資格と考えた方が良く矯正治療結果が担保されると考えるにはやはり無理があろうかと思います。巷には○○矯正認定医が溢れていますが、実は日本矯正歯科学会が認定医、専門医制度を発足させた為、それに各スタディグループが追従し内輪のグループ内でそれぞれ自由に基準を作りそれを基に発足させた単に国内用向けに作られた○○学会○○認定医なのです。
客観的な学術基準で厳選に選考されたわけではなく、内輪のグループ内で内々に認定されたもので残念ながら矯正の実力を示す指標にはなりえないと思った方が良いと私は個人的に思います。
矯正学会の取り扱いについては、管轄する厚生労働省も同じような見解を示していますので、矯正学会について国の評価、見解は今回前述させて頂きました内容とほぼ同一かと思われます。