歯と歯ぐきの関係

歯周組織

歯の周囲の組織の総称で全部で4種類

◆ 歯肉(歯ぐき):
お口を鏡でみたときに見えるピンク色の組織です。

◆ セメント質:
歯の根の表面を覆っている組織です。

◆ 歯根膜(歯と歯槽骨を結ぶ線維):
実際は細い繊維の集まりです。これにより歯がハンモックのように支えられています。

◆ 歯槽骨(顎の骨):
歯はこの骨の中に植わって支えられています。

健康な歯周組織図

これは歯を横から切った断面図です。歯、骨、歯ぐきから成り立っています。

歯は歯冠と歯根、骨は歯槽骨あるいは支持骨と呼ばれ、歯根が歯根膜繊維を介して直接、歯槽骨に埋め込まれ歯を支えており、これにより食物を咬んだり、飲んだり、話したりできます。

歯ぐきは歯槽骨を覆うように位置しており、歯と歯茎の境目で複雑な構造を呈しています(拡大図参照)。

遊離歯肉という1mmの歯肉溝といわれる溝は歯の全周にわたります。その下には上皮付着といわれる歯と歯茎が接着している部分が約1mmの幅であります。ここは外部から進入してくる細菌などに対して好中球などを遊走させ、外敵から歯や骨を守っています。

また、その下には結合組織付着という歯と歯茎の強固な接着があります。これは歯茎を歯に固定し、歯茎の形態を維持させる役目を担っています。

歯肉を顕微鏡で組織学的にみると、外側の部分を覆う上皮、中側にある結合組織、歯や骨とつながっている歯肉線維に分けられます。

上皮は外側のみえる部分を口腔上皮、内側の部分を歯肉溝上皮、歯と接している部分を接合上皮といいます。

歯肉線維のうち、セメント歯肉線維、歯槽骨歯肉線維、セメント骨膜線維はそれぞれの名前の組織をつなげています。歯間水平線維は隣合った歯をつなぎ、輪走線維は歯のまわりを取り囲むように走行しています。

健康な歯肉では歯肉線維が上皮を引っ張り、みかんの皮にみられるような小さな穴状の表面となります。これをスティップリングといいます。炎症により歯肉が腫脹すると、スティップリングは消失します。

歯と歯肉は上皮と結合組織の両方でつながっています。上皮付着は細胞同士がくっつくデスモゾーム結合の半分の部分、すなわちヘミデスモゾーム結合によりつながっています(実際には接しているだけという説もあります)。線維性付着(セメント歯肉線維の部分)は歯肉コラーゲン線維がセメント質に入り込む形でつながっています。

Gingival scallop

歯ぐきと歯の境目の形、歯頚線のスキャロップ形態は、「Periodontal biotype」といいます。

首をかしげる女性イラスト

Thin scallop ・中間型・混合型・Thick flat に大別されます。

◆ Thin scallop type
歯頚線が、最も綺麗な放物線のラインを描くきます。
・上顎前歯のscallopの高低差は、約5.5ミリ。
・放物線の最も高い歯肉縁部(FGM)は、穏やかなU字を示す。
・歯肉が薄い。
◆ Thick flat type
・歯頚線がフラットぎみである。
・歯肉が厚い
Scallopの最頂部は、3/5 程度やや遠心より。
・歯冠乳頭は、45度以下の点展開角をもった尖端形状を示し、コンタクトまで約1~1.5ミリ程度の位置を保ちます。

Osseous scallop

歯ぐきの中にある歯槽骨(歯を支える骨)と歯との境目の形態は、歯頚線に比べ緩めの放物線を描きます。高低差は、約3.5ミリ。健康な状態の場合CEJに相似した形態をとります。歯の断面(唇側部)に膨らみがある歯ほど、 歯頚線も骨も強い放物線を描きます。(歯の断面は、上顎1番が一番、豊隆が強い)

Biologic width

生体の外部環境と内部環境を隔てているのは上皮です。一般的には上皮の下には真皮が存在します。生体は、どの部位においても実質臓器と上皮の間には、結合組織が存在し、必ず一定の距離を保っています。口腔内の歯肉においては、どんなバランスになっているのでしょうか??

遊離歯肉 平均0.69ミリ
上皮性付着 平均0.97ミリ
結合組織性付着 平均1.07ミリ
それぞれ約1ミリ程度です。

この合計約3ミリの幅をbiologic width(生物学的幅径)と呼んでいます。これは、あくまで炎症のない健康な歯肉と歯槽骨の関係を示すものです。歯牙周囲の上皮は、一般の被服上皮と異なるため炎症等により、この幅が変化してしまいます。

歯周組織の厚さ

Maynardは、歯槽骨や歯肉の厚みによる骨頂部と辺縁歯肉との関係について報告をしています。(1970年)

◆ Maynardの分類
Type1:     厚い     厚い
Type2:     厚い     薄い
Type3:     薄い     厚い
Type4:     薄い     薄い

Height of osseous crest

Koisは、歯槽骨の高さによる歯肉辺縁部の分類を行った。(1990年)
Koisの分類 FGMから骨頂までの距離、骨頂の高さによって
・Regular crest (R)
・Low crest (L)
・Hight crest (H)

に分類しています。

◆ 唇側部
R  3ミリH 3ミリ以上 L 3ミリ以下
◆ 歯間部
R 5ミリH 5ミリ以上 L 5ミリ以下

Attached ginjivaの幅

付着歯肉の幅前述のmaynardの分類のType4の歯肉は、幅が狭いことが多く、歯ぐきの退縮を起こしやすい。 一般的には・付着歯肉の幅3ミリ程度・角化歯肉の幅5ミリ程度必要と言われています。

Papilla

歯間乳頭:健康な前歯の場合、歯間部の骨縁から乳頭部までの距離は約5ミリで、尖端は鋭い。乳頭部の遊離歯肉と上皮性付着の合計は、約4ミリ(唇側部の遊離歯肉と上皮性付着の合計は、biologic widthでも述べたが約2ミリである。)

その歯肉の幅 約4ミリの内訳は、乳頭の唇舌的は厚さ、全体の量と性状、乳頭下の骨の量,距離、隣接する歯の断面形態、厚さ、歯根間の距離で変化し、唇側部とは異なり複雑な状況が幾重にも折り合わさっています。

Total volume of the embrasure space

(1)歯根間距離
(2)骨頂からプロキシマルコンタクトまでの距離
(3)歯槽骨と歯肉の形態
(4)歯のカウンターに影響されます。

◆ 審美歯科治療を行う場合
(1)歯と歯ぐきの関係を健全な状態に改善。(上記の各付着を健康な状態に改善)
(2)その上で歯や噛み合せの治療を達成させなくてはいけません。
(3)歯と歯ぐきと歯槽骨が良好な関係である状態、かつ噛み合せも良好な状態
が、審美的な治療の達成目標です。